大前研一『中華連邦』

「中国三部作」の最後の1冊。今回は中国と台湾の関係にスポットを当てている。台湾の「独立論」「二国論」に対する中国の反発、台湾国内での葛藤、このどちらも俺らには飽き飽きするほどお馴染みの図式であるが、現在は、そうした政治的な対立とは裏腹に、もはや経済的には中国と台湾は蜜月関係であるという図式が示される。中国の地方政府は台湾企業の誘致に非常に熱心であり、実際に中国に最も投資しているのも台湾企業であり、台湾人の60%が中国での就職を希望しているのである。そうした経済的な蜜月関係を踏まえて、中国は自治も軍隊も保持して良いから形式上は中国の一部になりなさいというメッセージを発しており、台湾も特にビジネス寄りの人々は「まんざらでもない」という感じになっているのである。

大前研一は、中台合併は歴史的必然であり、2005年前後に実際に合併するんじゃないか、と要人の政治的な思惑も踏まえつつ予想している。俺は、中台併合が歴史的必然かどうかも実際に行われるかどうかもわからないし、にわかには納得しがたい。しかしながら、中国の対等や台湾の変化を様々なメディアで目にすることが多いのも確かだ。本書を読むことで、改めて、チャイナ・インパクトがアジア全土に吹き荒れる嵐だということが今まで以上によく理解できた。本書の内容は、『チャイナ・インパクト』に比べたら衝撃度では大きく劣るものの、チャイナ・インパクトの余波を探る副読本としてはなかなか面白いと思う。