中川淳一郎+OJTソリューションズ『OJTでいこう!』

コンサルタントによるトップダウンの改革では、コンサルタントがいる間は変わったように見えるかもしれないが、きちんと現場が理解していないため、コンサルタントがいなくなったら元通りになってしまう。だから、今こそOJTを活用して、現場からのボトムアップで会社を変革しよう――という内容だろうか。どのようにOJTを活用するのかといった概要を説明したあと、実際にOJTを活用することで変革に成功した企業のケースが掲載されている。

こうした取り組みを行っている「OJTソリューションズ」は、トヨタとリクルートのタッグにより生まれた企業である。トヨタとリクルートという(ある意味、無敵とも言える)組み合わせが存在していたことにまず驚いたが、基本的には、「息子世代」の元リクルート社員が営業を担当し、現場で何十年も働いてきた「親父世代」の元トヨタ社員がトレーナーとして顧客の現場に入り込み変革する、という構図である。今はトヨタで培ってきたノウハウが活かせる製造業に特化しているようだが、いずれは製造業以外の変革にもチャレンジするつもりのようで、本書では物流業の変革の模様も掲載されていた。なかなか面白い会社だと思うし、本書も非常に面白かった。必読。

ただ、少し気になったのは、文を担当した中川淳一郎という人の書き方である。一口にコンサルティングと言っても色々あるわけで、現場に入り込むタイプのコンサルティングファームや定着化を重んじるタイプのコンサルティングファームも最近はけっこう存在するわけだから、コンサルタントを全部ひっくるめて「トップダウン」「コンサルタントじゃ変わらない」と切り捨てる姿勢は少し気になった。OJTという手法に光を当てたいという気持ちはわかるが、OJTソリューションズの目指すものは(日本らしい色合いを加えつつも)まさにBPRコンサルティングとか業務改善コンサルティングとか言われている領域に非常に近しいものだと思うし。