一橋総合研究所『金融市民革命』

一橋総合研究所といっても別に一橋大学とは関係ない。石原都知事の政策ブレーン的な勉強会を元にした民間独立系シンクタンクらしい。一橋総研など初めて聞いたが、本書では非常に面白い提言をしていた。その提言とは「中小企業のための新銀行創出を」「投資バウチャーで日本の構造が変わる」「税金の1%の使い道は国民が決めよう」の3つである。

最も面白いと思ったのは2つ目の「投資バウチャー」である。投資バウチャーとは株式に交換できる「券」のことで、20歳以上の全成人に投資バウチャーを配布し、それを受給者は希望する株式と変更し、株式投資を始められる。いわば「習うより慣れろ」の精神で、市場原理や資本主義のルールを学んでもらい、間接金融から直接金融へのシフトを手助けする政策である。地域振興券とも似ているが、地域振興券の場合、使い道が自由だったため、結局は生活必需品の消費に使われ、あまり新たな需要喚起には繋がらなかった。しかし、投資バウチャーの場合は、投資という庶民が普段は取らない行動の喚起であるため、新たな需要喚起に繋がるのである。もちろんモラルハザードを防ぐために購入資金の何割かは自己負担だが、それでもバウチャーを使えば確実に得ではある。

投資バウチャーを受給された者の何割かが投資をするようになり、リスクに対する感覚が養われれば、政策としては成功なのである。政府でも、投資バウチャーについては真剣に検討しているそうだ。本当に実現するとしたら、とても興味深い。