吉原基貴+綱本将也『U-31』2巻

U-31(2) (モーニング KC)

U-31(2) (モーニング KC)

1巻の終わりに、架空(?)のサッカー雑誌、週刊フットボールマガジンの編集長がコメントを寄せるという趣向があった。

絶望的なことにフットボールというスポーツにおいて、若くして栄光を手にした選手が転落したのち再びトップレベルに戻った例は、世界に目を向けてもほとんどない。

確かに多くの選手名が俺にも思い浮かぶが、本書は、この命題に果敢にも挑戦している。本書のテーマは「色褪せた輝きを取り戻せるか」だと俺は思う。
トップ下でアトランタ五輪代表にも選ばれ、将来を期待された元スター選手は、地方の弱小クラブを捨てて大手クラブに移籍したものの、輝きを失い、戦力外となる。しかし主人公は、輝きを取り戻すべく、サッカーに真剣に向き合い、選手として大事な時期を棒に振った自分と向き合う。その結果、主人公は、優勝争いにも絡み、全盛期の体のキレを取り戻しつつある。しかし現実は厳しく、主人公は代表には依然として呼ばれることはない。一方、海外の二部リーグで苦闘していた旧友は、サッカーに真剣に向き合い、自分とも真剣に向き合った“結果”として、文字通り「命を賭けて」ドーピングを選び取る。日本人離れした圧倒的なフィジカルと存在感で日本に凱旋帰国したストライカーは、日本代表の救世主として降臨する。主人公のチームも旧友の破壊力に屈してしまう。
そのような中、この数年間誰よりも走り込んできた主人公は、肉体的なピークを迎える。年齢的にも、これ以上フィジカルの数値が上がることはないという現実。しかし主人公は、海外とドーピングで生まれ変わった旧友のような圧倒的な肉体を得ることはついに無かった。長年の不摂生を払拭し、グッドプレーヤーに生まれ変わったが、旧友のような、全身から滲み出るゴールの匂いも、圧倒的な存在感も、国民への説得力も、無い。
主人公はフィジカルを鍛えるだけでなく、「武器」を模索するが、それは、戦術家としてマイナーチームで数々の実績を残してきた自チームの監督がもたらしたくれることとなる。テクニックを磨くしかないと焦る主人公に、監督は言う。日本人は、充分なほどテクニックはある。しかし戦術理解が足りない。そして1つ1つのプレーの精度を高めることにしか興味がなく、巧いパスに満足して立ちつくすパサー、抜くことだけに集中してクロスを挙げるタイミングを逸するドリブラー、ボールキープに腐心するあまり孤立するポストプレーヤー、クリアに精一杯でボールを繋げないDF。彼らは理解していない。フットボールはプレーの連続で成り立つのだ――。
主人公が辿り着いた答えは、「プレーの先のヴィジョン」。意識とプレーを変えた主人公は、少しずつプレーの先のヴィジョンを見通せるようになり、フットボールを知るプレーヤーとしてさらなる成長を遂げる。そして、命を賭けてドーピングを使い続ける旧友に、自らのサッカー人生を賭け、再挑戦する――。どこまでも胸の高鳴るクライマックスである。非常に面白いサッカー漫画と言えるだろう。