新井英樹『RIN』1巻

RIN(1) (ヤンマガKCスペシャル)

RIN(1) (ヤンマガKCスペシャル)

ヤングマガジンアッパーズで『シュガー』というボクシング漫画を連載していたものの、雑誌の休刊(廃刊?)により、中断。タイトルを『RIN』に変えてヤングマガジンで続編の連載を始めたものの、休載に休載を重ねる始末。結局、現在は別冊ヤングマガジンに掲載されている。面白さは以前も今も圧倒的なのだが、なかなか上手く行かない漫画。
前作『シュガー』では、「かませ犬」に4秒という世界最短KO記録で負けたリンが、今度は自分が「超大型新人」の「かませ犬」として挑んだデビュー2戦目で、自身の非凡な才能を開花させて全国に見せつけ、ボクシングの快楽をはっきりと自覚するところで終わる。今作『RIN』では、第1話からいきなり世界戦で、しかもベルトを奪取してしまう。
しかし、あまりにもアッサリと世界チャンピオンの座を射止めたからだろうか、リンは満たされない。しかも自身の才能に振り回され、心のバランスや言動をコントロールできなくなっていく。抑え切れないのか、それとも傲慢さ故に抑え方を忘れてしまったのか、ちょっとしたことで機嫌を損ねて大暴走。世界戦の勝利者インタビューでもテレビ出演でも大暴れして、周囲をパニックに陥れる。また、そうした人間性の変化を、自分の好きな幼馴染の女に指摘され、さらに苛立ちを強める。このあたりの描写は、とても巧い。そしてさらに巧いのは、新井英樹は、主人公に安易に感情移入させない点。主人公とはいえ、リンは天才なんだから、安易に感情移入できては駄目なのである。読んでいて主人公の言動にはムカムカしっ放し。
物語がどうなるか、まだ先は読めないが、要注目!