桂正和『ZETMAN』3巻

ZETMAN 3 (ヤングジャンプコミックス)

ZETMAN 3 (ヤングジャンプコミックス)

1巻の「プロローグ」と2巻の「第1章 コウガとジン」では、主にジン(人)という少年が主役の物語であった。ジンは、プレイヤーと名づけられた怪物を倒すべく造られた。生まれながらにしてヒーロー(怪物?)としての超人的な力を持っているのである。しかしジンもその「親」も、その数奇な運命を必ずしも喜んではいないし、ヒーローになることを望んでもいない。
一方、3巻から始まる「第2章 青義」の主人公・コウガは、自分がヒーローになることを痛切に望んでいる。泣く子も黙るアマギコーポレーションの跡取りにして、学力も全国クラス、サッカーも全国優勝、そしてハンサム……というまさに「漫画」じみた境遇なのだが、しかしコウガは満たされないものを抱え続ける。それは「ヒーローになりたい」という子供のころからの夢に対して、誰も本気で取り合ってくれないからである。
幸いにも生家は、優れた財力と優れた科学力を有しており、コウガはアマギコーポレーションの技術を利用して「ヒーロー」になろうとする。その目論見は一部ではあるが短期間で成功した。しかし、ある怪しげな男がコウガに近づき、ヒーローになりたいというコウガを誉めそやす。「キミの手助けをしたい」が、ヒーローとしての資格があるかどうか「テストを受けてもらう」と、コウガを無理やり命がけの「テスト」に巻き込むのである。
正義とは何か。悪とは何か。絵は巧いがありふれたモチーフだ……と思っていたけれど、さらに物語が面白くなってきた。アメコミ調の絵柄もナイス。