矢田龍生+矢田晶紀『ザ・フィンランド・システム』

ザ・フィンランド・システム―日本ビジネス再生の鍵は、フィンランド(世界競争力1位)にある

ザ・フィンランド・システム―日本ビジネス再生の鍵は、フィンランド(世界競争力1位)にある

子供のころに「フィンランド」と聞いて思い浮かべるものといえば、オーロラと福祉とフリーセックスとタイガくらいのものだったが、最近はフィンランドと聞いて思い浮かべるものも様変わりしている。フィンランドは現在、ノキアLinuxに代表されるIT産業国家として名高く、世界経済フォーラム(WEF)が毎年発表する国際経済競争力では毎年のように1位を獲得している。また世界最高水準の教育により高い知性と言語能力(国民の多くがトライリンガル以上)を獲得しているとのこと。そのようなフィンランドの力の源泉を、主にIT系ベンチャー企業の生まれる土壌の調査から浮き彫りにしようとしているのが本書である。
とはいえ、フィンランドの経済システムを生態系になぞらえた比喩が、正直に言って俺にはピンと来ないというか、わかりづらい。そういった俺のような人間には、ベンチャーサポートを行うフィンランドの公的機関やフィンランドを代表するITベンチャーのインタビュー&紹介にとどまってしまっているのが実情である。まあそれでもフィンランドに興味のある方には面白い話が多いと思う。フィンランドの輸出に占めるノキアの割合が20%だったりするのは、日本における豊田市のようなイメージなのだろうか。
つーかフィンランドは、人口や経済規模のわりに、ずいぶんインキュベータが多いね。ビジネスであるかどうか、公的であるかどうかを問わず、やはり新しいチャレンジを是とする装置が日本にももっと必要だと思う。