『若草物語 ナンとジョー先生 10』

若草物語 ナンとジョー先生 10 [DVD]

若草物語 ナンとジョー先生 10 [DVD]

若草物語』の四姉妹の次女・ジョーと夫のベアが、理想の教育を追求するため全寮制の学園「プラムフィールド」を設立して、おてんば娘・ナンを始めとした純粋だが個性の強い子どもたちと格闘する――というアウトラインの、ハウス食品がスポンサーのテレビアニメシリーズ「世界名作劇場」のDVD版。最終巻となる第10巻には以下の放送が収録されている。

第37話:旅立ちへの予感
第38話:それぞれの決心
第39話:おてんばジョー自転車に乗る
第40話:さよならプラムフィールド

第10巻では、プラムフィールドからの旅立ち(あるいは本作のエンディング)に向けて、4話を費やしてゆっくりと物語が展開する。最年長のフランツは、ジョー先生やベア先生のような教師になってプラムフィールドに戻ってくるため、来月からプラムフィールドを出て大学で学ぶことを決意する。ダンは、ページさんから「ブラジル行きの研究旅行の助手として連れて行きたい」と誘われる。トミーは、父親の後をついで会社社長になり世の中の役に立つという夢を叶えるため、来月からボストンの大学に進むよう父親&ジョー先生&ベア先生から言われる。他のみんなも、少しずつ「ポスト・プラムフィールド」である自分の将来を真剣に考え始める。一人一人に自立精神が養われてきた証拠だが、まだプラムフィールドに来て1年で、今が楽しくて仕方ないナンは、寂しさにとらわれる。
もちろん、みんなプラムフィールドが嫌いになって出ていきたいわけではない。ダンは、もっと大きなところで自分の力を試したいと思うも、ジョー先生やナンを悲しませるのではと、結論を躊躇する。しかしジョー先生と話をしたダンは、やはりブラジルに行くことを決意する。またトミーは、ずっと死ぬまでプラムフィールドにいたいのだとジョー先生とベア先生に言う。ボストンの大学に行くという知らせに、気を失うほど動揺したのである。しかしベア先生は言う。自分がトミーに教えられる最後のこと、それは「自分の未来を自分で切り開いていこうとする勇気」だ、と。トミーは勇気を振り絞る決心をする。
たとえ現状が自分のためにならなかったり居心地が悪かったりしたとしても、自分の環境を変えることには誰しも躊躇するものである。大好きな場所からの旅立ちは、躊躇だけでなく身を切る辛さもある。ナンは時間をかけてこの問題を克服し、哀しいけれど友人たちの旅立ちを祝福しようと決心する。このあたり、泣けるシーンは満載である。
ダンの旅立ちの日、ナンは、ダンが泣いたら困るから見送りなんてしないと言う。そして実際に最後の見送りには来なかったが、それはダンの愛馬・チャーリーの尻尾で作った指輪を探していたのである。見つけたとき、ダンは出発してしまったところだった。ナンは、トミーに近道を教えてもらい、ダンの馬車に追いつき、指輪を渡すのである。ナンとダンの最後のシーンは、かなり良いね。二人とも淡い恋心(とも呼べないほど淡く切ない何か)を抱いていたことが暗示される。またトミーの表情からは、その二人の心を知ってしまったようにも読み取れる。
この種の物語(学園モノ)では「別れ」や「旅立ち」は必ず描かれるのだが、それまでの描写が下手だと、とたんに陳腐になる。その点、本作は本当に泣ける。視聴者が子どもたちの成長を実感できたのである。まさに傑作。この種の物語を今の少年少女が地上波&リアルタイムで観られないのは、大きな損失であろう。世界名作劇場は、復活させなければならーん!