幸村誠『プラネテス』1巻

プラネテス(1) (モーニング KC)

週刊モーニングで不定期連載されたSF漫画。2002年度の星雲賞コミック部門を受賞し、本作を原作にした同名のテレビアニメも2005年度の星雲賞メディア部門を受賞している。物語のスタート時点は西暦2074年。人類は、エネルギー資源を求めて宇宙に進出する。月ではヘリウム3の採取のために巨大なスペースコロニーが作られ、月や宇宙ステーションで生活する人間も珍しくなくなった。火星には既に実験居住施設があり、木星や土星の友人探査計画も進む。しかし宇宙開発の中で生まれた宇宙のゴミ（スペースデブリ・廃棄された人工衛星やロケットの残骸など）の問題は深刻だ。ちょっとしたネジや卵サイズの金属破片が宇宙船を大破させるのである。また宇宙資源の恩恵は先進国が独占しており、地球での様々な「格差」を宇宙開発が拡大させている、という見方も可能だ。
主人公のハチマキは、デブリの回収作業を仕事としている。デブリ屋はハードで危険な仕事だが、必要な仕事だ。仲間も良い奴らだ。給料も良く、いつか宇宙船を個人所有することを夢見ているが、それでもなお今の給料では宇宙船の個人所有など難しい。夢と現実と大義のバランスをとりつつ生きているのである。
……宇宙でも地球でも若者の悩みは変わらないね。人類のエゴも。
宇宙葬や月面人（ルナリアン）といった宇宙空間・近未来ならではのテーマと、今も未来も変わらない普遍のテーマ。それらが巧くバランスされており、とても面白い。もっともっと猛烈に売れまくって良い作品ですね。必読。