奥本大三郎『ファーブル昆虫記6 伝記 虫の詩人の生涯』

大人が読んでこそ面白い、ジュニア版『ファーブル昆虫記』の完結編。
第6巻は、特定の昆虫ではなく、ファーブルの人生を丹念に追いかけた伝記である。元々それほど裕福でない(むしろ貧乏な)家に生まれたファーブルは、それなりに安定していた学校の先生になったが、教師は当時あまり給料の高い職業ではなかったようだ。しかしそれでも教えることは嫌いではなかったし、本を1冊買うのにも四苦八苦しながら、独学で地道に研究を進めることで、だんだん「知る人ぞ知る」存在になっていく。そして嫉妬や嫌がらせを受けながらも、少しずつ少しずつ知識や名声・財産を得て、ついに執筆業一本で何とか食べていくようになるのである。
第6巻は『ファーブル昆虫記』の翻訳ではないけれど、ジュニア版のラストを飾るに相応しい内容である。奥本大三郎の活き活きとした描写は本当に素晴らしく、大人も子どもも読むべきシリーズであろう。いや、本シリーズの感想で俺が言い続けていることだが、むしろ大人こそ読むべきだとも思う。知的好奇心や地道な努力といった大げさなことを言わずとも、人生を楽しむための基本原則――身の回りの物事に対するワクワク感を取り戻すためにも、必読であろう。