カール・スウェル+ポール・B.ブラウン『一回のお客を一生の顧客にする法』

一回のお客を一生の顧客にする法―顧客満足度No.1ディーラーのノウハウ

一回のお客を一生の顧客にする法―顧客満足度No.1ディーラーのノウハウ

レクサスやキャデラックを売るアメリカの大手カーディーラーの経営者による著書。「笑顔よりシステムだ」と、あくまでも合理性の観点から顧客サービスを重視する発想は実にアメリカ的だ。実際、自社にとって今後も「良い顧客」になり得ない問題顧客には、あえて近くのライバル店を紹介するらしい。また基本給をなくして歩合制(フル・コミッション)や利益配分方式に全面移行することを強く推奨するなど、アメリカは日本の労働文化・労働環境と大きく異なっているようだ。日本では、完全歩合制の企業でモチベーションやチームワークが維持できるとは思えない。
ただ、さすが車社会アメリカと言うべきか、著者の「キャデラックやレクサスは夢の車だ。夢の車を買うことは特別な経験であるはずだ」という発言は、日米に共通する高級車の本質をよく捉えたものだと思う。一部のスーパーリッチを除いて、やはり400万〜1000万以上する高級車の購入は富裕層にとっても多大な出費で、特別な覚悟が必要になる。そうである以上、高級車には(車が特別であるのは言うまでもなく)特別なサービスや特別な優越感が不可欠なのである。