波頭亮『プロフェッショナル原論』

プロフェッショナル原論 (ちくま新書)

プロフェッショナル原論 (ちくま新書)

マッキンゼーを経てコンサルティング会社を設立した波頭亮の著書。著者は「プロフェッショナル」を、「高度な職能の保有」「特定のクライアントの問題解決」「インディペンデントな立場」という3つの形態的要件と「公益への奉仕」「厳しい掟の遵守」という2つの意味的要件から定義している。具体的には、高いスキルと職業倫理を持って働くコンサルタントや医者・弁護士・建築家といった職業が当てはまるだろう。
先輩から推薦されて読んでみたが、「原論」と書くだけあって著者の挙げるプロフェッショナルの条件はなかなか厳しいものだ。ストイックあるいは求道的とすら言えるスタンスだが、興味深いものも多い。特に「値引きはしない」「成功報酬の禁止」といった要件などは「なるほど!」と目から鱗であった。成功したらお金をくださいというのは一見クライアントに対して良心的であるようにも見えるが、確かに考えようによっては無責任だし、商業主義的な卑しさもある。プロフェッショナルに仕事を頼むクライアントは切羽詰まっていることも多く、その切迫感を逆手に取り「手術に成功したらお金を3倍ください」と言うような姿勢は問題を孕んでいると著者は指摘するのである。また著者は「クライアントからの依頼に対して、上手く行ったら良いけれどダメだったらゴメンナサイといった安易な姿勢では決して仕事を引き受けてはならない」と強く述べている。厳しいが、その通りだろうと俺も感じた。実際は上手く行く仕事ばかりでもないが、これは職業倫理と覚悟の問題なのである。