堀公俊+加藤彰『ファシリテーション・グラフィック』

会議を取り仕切り、活性化させるファシリテーションは、ファシリテーター役(司会役)とグラフィッカー役(書記役)に大別される。まあ司会とホワイトボードへの書記を1人で行うことも多いようだが、本書ではファシリテーションの「グラフィッカー」としての側面、ホワイトボードや模造紙に書き留める技術を体系的に紹介している。
注目すべきは、四角張った文字の方が字の下手な人でも丁寧に見えるとか、漢字よりも平仮名を小さく書いた方が文字の据わりが良いとか、紫色のペンがどのような映え方をしてどのように使えば効果的であるとかいった風に、精神論や理想論ではなく、もっぱら書記の「スキル」や「ツール」といったテクニカルな視点から書かれている点である。ファシリテーターの振る舞いとは、そもそも(超一流になれば別にしても)ある程度までは誰もが習得可能な体系的スキルである。それならば、スキルやツールを使いこなす経験を積むうちにファシリテーションとしての心構えも身につく――というスタンスは、筋が通っていると思う。
最近は社内の会議や研修でグラフィッカーを意識的に務めるようにしているが、なかなか上手く書き留めることは難しいし、議論の活性化ともなるとさらに難しいものである。逆に言えば、グラフィッカーとして上手く振る舞えれば、それだけでファシリテーターとしてもそれなりのレベルに達すると感じる。ファシリテーションの本は何冊か読んだけれども、本書が最も俺に合う。何度も読み返しながら習得したい。