
- 作者: 細野不二彦
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2000/07
- メディア: コミック
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この巻には以下のエピソードが収録されている。
ART.1 当世質屋物語
ART.2 甦るアール・デコ
ART.3 箪笥の中に
ART.4 パリスの審判
ART.5 ショパンの心臓
ART.6 楊貴妃の香(前編)
楊貴妃の香(中編)
楊貴妃の香(後編)
表題作「楊貴妃の香」は圧倒的に面白い。体から得も言わぬ香りを発する「挙体異香」という体質がある。楊貴妃は挙体異香の持ち主だったそうだが、ある女優が役作りのためジャン・ポール・香本に挙体異香を身にまとう秘薬「体身香」をもらっていた。しかし効果がない。体臭には体質・資質があり、彼女には挙体異香を身にまとう資質はなかったのである。そのとき、その女優に借金を催促するべくサラが現れる。香本は、サラの持つ傑出した素材としての体臭に惹かれ、サラに「体身香」の無料モニターを持ちかける――というプロローグ。香本の特異なキャラクターが際立っており、非常に面白い。一方、香本とサラのことについて知ったフジタは、サラが挙体異香を身にまとったとき、変態的な香本が次にナニを欲するかを、同じ「美の求道者」として敏感に感じ取る。そしてサラを守る最後の防波堤を用意するのである。なかなか深まらないフジタとサラの関係性にも踏み込んだ非常に面白いエピソード。