細野不二彦『ギャラリーフェイク』24巻

ギャラリーフェイク (24) (ビッグコミックス)

ギャラリーフェイク (24) (ビッグコミックス)

細野不二彦による傑作美術漫画。主人公の藤田玲司(フジタ)は、かつてはニューヨークのメトロポリタン美術館 (MET) の敏腕キュレーターで、卓越した修復技術や豊富な知識から「プロフェッサー(教授)」と称えられるほどの尊敬を集めていたが、元同僚の陰謀によりメトロポリタンを追われ、帰国。現在は、表向きは贋作やレプリカといったニセモノを専門に扱う「ギャラリーフェイク」という画廊(アート・ギャラリー)の経営者だが、裏ではブラックマーケットに通じ、盗品や美術館の横流し品を法外な値で売る悪徳画商という噂であり、その噂は完全に真実である。しかし一方で、メトロポリタン時代から一貫して美に対する真摯な思いを持ち続け、美の奉仕者としての面も持つ――という設定。Q首長国クウェートがモデルの模様)の王族の娘であるヒロインのサラ・ハリファや「美術界のジャンヌ・ダルク」と呼ばれる三田村館長など、脇役も非常に魅力的である。
この巻には以下のエピソードが収録されている。

ART.1 花観る人々
ART.2 20世紀より来た刺客
ART.3 エルミタージュの女帝
ART.4 鬼平の十手
ART.5 カッパドキア・CUBE
ART.6 湿度
ART.7 美神法廷(ミューズコート)
ART.8 千鳥香炉
     千鳥香炉(後編)

個人的には「千鳥香炉」が好きだなあ。ある意味フジタやサラにとって最も厄介な相手であるジャン・ポール・香本とサラのエピソード。千鳥香炉とサラの腋の匂いを賭けて勝負するというストーリーは、馬鹿馬鹿しいながら、香本の変態性を考えたらちっとも不思議じゃないのである。また表題作「湿度」のモチーフは「日本人に一番人気の高い絵」というものである。確かに「なるほど」と思わせる話だ。