藤子・F・不二雄『藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版 8 [鉄人をひろったよ]』

藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版 (8) (SF短編PERFECT版 8)

藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版 (8) (SF短編PERFECT版 8)

藤子・F・不二雄は、『ドラえもん』や『パーマン』『21エモン』『ウメ星デンカ』『モジャ公』『キテレツ大百科』『エスパー魔美』といった漫画で知られている漫画家である。藤子・F・不二雄の言う「SF」は「サイエンス・フィクション」の略ではなく、「すこし・不思議」の略である。これらのすこし・不思議な「SF」は、まさにF氏にしか書けない貴重な子供向け作品群だが、一方で大人向けのSF短編集も意外なほど多く発表している。本書は、発表された年代別に藤子・F・不二雄の大人向けSF短編112話を全8巻に完全収録したパーフェクト版である。
シリーズ最終巻となる第8巻には以下の作品が収められている。

懐古の客
四面鏡
昨日のオレは今日の敵
侵略者
親子とりかえばや
宇宙からのおとし玉
殺され屋
マイホーム
丑の刻禍冥羅
マイ・シェルター
鉄人をひろったよ
裏町裏通り名画館
有名人販売株式会社
絶滅の島
異人アンドロ氏

「懐古の客」は、シリーズ第7巻を読んだ方には必読であろう。シリーズ第7巻で何度も登場したカメラを売る宇宙人が、どうして地球に取り残されるようになったのかが描かれているエピソードだ。名前はヨドバで、職業はカメラのセールス。明らかにヨドバシカメラからつけられており、その安直さが逆に「ニヤリ」という笑いを誘う。また「四海鏡」に出てくるカメラは、時間ではなく場所を自由に設定して、世界中のどこでも写すことができる。これを金持ちのじいさん2人に売りつけようとする――というプロローグ。これはオチが秀逸で、ジーンと来る。また「絶滅の島」は、シリーズ第6巻の「絶滅の島」と読み比べると、実はかなり面白い。これだけ見ても面白いけど、面白さは半分。
なお巻末には、小学館コミック編集局コミックス編集室によるコメント「藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版について」と、藤子・F・不二雄本人によるコメント「え〜、「S」「F」につきまして、ちょいと一服……。」が掲載されている。ここまで狙いが明確でレベルの高い作品集を作ってくれた小学館には大感謝である。