森生明『会社の値段』

会社の値段 (ちくま新書)

会社の値段 (ちくま新書)

そもそも「企業価値」とは何か?
企業価値」は果たして誰のための価値であり利益なのか?
企業価値」と「株主利益」はどう違うのか?
これらの問題に対して本書は非常にわかりやすく解説を加え、示唆を与えてくれている。「企業価値」の意味合いについては、もちろん今までも何がしかの教科書的な回答を口にすることはできたのだが、しかし本質的な部分はやはりよくわかっていなかった。そうか、「企業価値」とは実に日本的な言葉であり概念であったのだな、と本書を読んで初めて認識した次第である。
例えば、ライブドアによるニッポン放送買収騒動の際に双方の主張を聞き、多くの人間が(どちらが正しい/正しくないの前に)抱いたであろう「どうも話が根本的にかみ合っていないような?」という気持ち悪さの正体は、実はライブドアが「株主利益」の観点から買収を主張し、ニッポン放送が「企業価値」の観点から買収に反対していた――という(シンプルだが重要な)経緯が、本書を読めばよくわかる。