あだち充『H2』34巻

H2 (34) (少年サンデーコミックス)

H2 (34) (少年サンデーコミックス)

『タッチ』『クロスゲーム』『みゆき』『陽あたり良好!』などで知られるあだち充による青春高校野球漫画。最終巻。比呂は、キャッチャー野田の好リードもあって、相手打線を見事に抑える。英雄に対しても、ストレート一本ではなく、スライダーなどの変化球を巧みに使って英雄を押さえ込む。比呂のモノローグが良い。

真っ向勝負なんて言葉は……
打者にとって都合のいい――
きれいごとだぜ!

全くその通り!
どこかで聞いたことがあるが、プロ野球の世界でもし球種が完全にわかっていれば、バッターが圧倒的に有利になり、バッターは4割どころじゃない打率を残せるそうだ。そりゃ当たり前の話で、球種が完全にわかれば、何度か対戦するうちに球筋とタイミングがわかる。160キロのストレートだろうが、80キロのチェンジアップだろうが、あとはコースだけなのである。バッティングマシーンだ。清原みたいに「ストレートで勝負せえ!」などとピッチャーを威嚇する奴は、「俺に打たせえ!」と威嚇しているのと同じだと俺は思っている。
そもそもストレートが真っ向勝負あるいは男らしいピッチングで、変化球がかわす投球なんて、誰が決めたのだろうか。投手は自信のある球種をベースにしながら、相手に球種やコースを悟られないように投げるべきで、それこそが本当の真剣勝負だと思う。