ニコラス・サリバン『グラミンフォンという奇跡 「つながり」から始まるグローバル経済の大転換』

グラミンフォンという企業のストーリーやそのインパクトについて、グラミンフォンを立ち上げたイクバル・カディーアのエピソードを中心に書いている。グラミンフォンは、固定電話も満足に通っていないバングラデシュで携帯電話ビジネスを初め、その貧困層の女性にターゲットを当てたビジネスモデルによって、貧困からの脱出に大きく貢献したそうである。今では、グラミンフォンを参考に、アジアやアフリカの多くの国で携帯電話が普及しているそうだ。こういった社会構造にプラスのインパクトを与えるビジネスは、とても幸福な気持ちにさせる。それにグラミンフォンは、何も慈善事業から貧困層のために携帯電話を貸し与えているわけではなく、あくまでも儲けるためにビジネスをしている。面白い企業である。
このグラミンフォンの立ち上げには、もちろん今やバングラデシュを象徴すると言って良いグラミン銀行のムハマド・ユヌスが大きく関わっているのだが、それだけでなく丸紅の協力も大きかったようだ。バングラデシュのような不安定な国に躊躇なく資金を投入してビジネスできる商社の存在意義は、21世紀でも衰えないだろうな。
ところで現在イクバル・カディーアはグラミンフォンを去り、電力ビジネスを立ち上げているそうだ。生まれついての起業家資質なんだろうかね。興味深い人物である。