黒木亮『巨大投資銀行(上)』

どれだけ活躍しても東大卒でない限り厚遇されない邦銀人事に絶望し、東都銀行から外資系投資銀行モルガン・スペンサーに転職した桂木栄一。ソロモン・ブラザーズの東京オフィスでトレーディング部門のヘッドを務め、裁定取引で莫大な利益を上げ続ける竜神宗一。病弱な妻のため医療の進んだアメリカのソロモン・ブラザーズで生き延びた後、外資系投資銀行ファースト・スイス証券の東京オフィスでデリバティブのセールスを行う藤崎誠治。この3人の巨大投資銀行(バルジブラケット)での生き様を、歴史的事実や実在する人物も織り交ぜながら描く長編小説。

物語の始まりは、桂木が東都銀行を辞めてモルガン・スペンサーに移る1985年なのだが、ここから下巻の終わりまでかけて約20年間の金融業界の模様を紡ぎ出す。二段組ということもあり最初は「文字多いな〜」と感じるが、これは面白い! 物語に引き込まれて、すぐ文章の長さを感じなくなる。まあ黒木亮の小説はどれも面白いけど。

ちなみにモルガン・スペンサーのモデルは、モルガン・スタンレー。ソルトこと竜神宗一のモデルは、シュガーこと明神茂。ファースト・スイス証券のモデルはおそらくクレディ・スイス証券だろうな。ただ、東都銀行やソロモン・ブラザーズといった実在する会社や、ジョン・メリウェザーやマイケル・ミルケンといった実在する人物も、密接にストーリーに関わってくる。