岡嶋裕史『ウチのシステムはなぜ使えない』

ウチのシステムはなぜ使えない SEとユーザの失敗学 (光文社新書)

ウチのシステムはなぜ使えない SEとユーザの失敗学 (光文社新書)

SEとユーザー企業の関係を、主にユーザー企業(発注側)の視点からユーモアを交えて論じた本。
本書は以下の構成になっている。

第一部:SEという人々
第二部:SEと仕事をするということ
第三部:ユーザとSEの胸のうち

この種の本はどうしても開発側に光が当たるのだが、運用系のSEとユーザーの情報システム部門の気持ちや行動にけっこうスポットライトを当てており、その点が参考になった。文章も非常にわかりやすい。
また第三部はケーススタディになっており、ユーザー企業(発注側)とベンダー(受注側)の両方の視点から、ひとつのプロジェクトの悲喜こもごもを書いている。これがなかなか面白い。ベンダーが自社システムのメリットを「Web5.0」的な革新性と位置づけ、その(自称)革新的な画面を「マーキュリーインターフェース」と名づけるくだりは、かなり笑える。まあIT業界に縁のない方はこのケースを「大袈裟だ」と思うかもしれないが、俺の前職(中小ITベンダー)では、実際このような事態が発生するのは日常茶飯事だった。「ユーモアはあるが、誇張はない」と言って良いだろう。