冨山和彦『会社は頭から腐る』

著者が言っていることで強く共感することがある。それは、組織の中で(一見)正しくないと思われる行動を取る人間も、その人間が愚かなわけではなく、構造的に愚かな行動を取らざるを得ないことが多く、また一見して愚かに見える行動にも本人なりの理由があることも多い――という指摘だ。正確な引用ではないが、この考えには全く同感である。俺は以前、森時彦『ザ・ファシリテーター2 理屈じゃ、誰も動かない!』のエントリーで

適切でない行動や思考にも、その本人にしてみれば、それなりの言い分がある。それは会社やチームとして妥当な言い分とは思えない場合も多いが、それはやはり「言い分」なのである。

と書いた。俺は、これこそ人と組織の問題の本質ではないかと考えているのだが、著者はこの考え方をよりアツく、より洗練された言葉で書いている。素晴らしい。
なお本書は、前回のエントリーで紹介した『指一本の執念が勝負を決める』と内容が重複している箇所が多い。その点は非常に残念だが、それでも著者の2冊の本に込められた情熱はいささかも揺るがない。