梶尾真治+鶴田謙二『おもいでエマノン』

梶尾真治のSF作品『おもいでエマノン』を、孤高の天才絵師・鶴田謙二が漫画化。

元々、小説の挿絵を描いていたのが鶴田謙二だったらしく、その流れを受けて漫画化したらしい。ストーリーとしては、フラフラと当て所ない旅行をしていた(が、金の尽きてきた)青年が乗り込んだフェリーにて、エマノンと名乗る不思議な女性と出会う――というもの。プロローグだけで何も本質に触れていない内容紹介だが、SFは話の流れやオチを言ってしまうと台無しなので、このくらいで勘弁。

とにかく良いのが、鶴田謙二の透明感のある絵。ストーリーと実にマッチしている。人物描写も良い。エマノンの全てを射抜くようでまた吸い込まれるような目、そして少女のようなそうでもないような年齢不肖な表情、腰まで伸びた黒髪、そばかす――はっきり言って女性像のひとつの極北である! それをたやすくヴィジュアル化し提示してみせる鶴田謙二の才能は本当に凄まじい。それとは対照的な青年の普通っぽさもまた凄まじい。

もちろん話も良い。梶尾真治の原作小説は未読だが、図書館で早速借りてきた。原作に忠実に漫画化しているそうなので、本書の叙情溢れるモノローグはおそらく梶尾真治の成果なのだろう。近日中に読みたい。

ところで鶴田謙二のコミックスは5年ぶりとのこと。そんなに間が空いていたか〜。この人の絵は本当に巧いけれど、さすがに寡作すぎるよな。どうやって暮らしているんだろう。