『diaries(ダイアリーズ)』2008 August vol.01

電車に乗っていたときのこと。

やばい。
モーツァルトなら俺、
もう死んでる年だ。

中吊り広告の左側に書かれていた、衝撃的なキャッチコピー!
20代後半から30代前半の人間が常日頃から漠然と抱いている(そして明らかに10代後半から20代前半の青年とは異なる種類の)焦燥感をビンビンに刺激する名文句である。(そう言えばモーツァルトは何歳で死んだのだろうか……と調べたところ、35歳。どうやら俺はまだモーツァルトが死んだ年齢には到達していないらしい。そんなことで安心していて良いのか俺。)
俺は一瞬で中吊り広告に引き込まれたわけだが、右側も良い。

特集/宇宙へ行っちゃう?
僕らのフツーな宇宙生活について、くだらなくも真面目なダイアリーズ的視点で考えてみる。今までこんな切り口ありませんでしたよね、荒俣先生。ったく大人は面白いなぁという、ほぼ全ページ特集クラスの中身。編集長、これいつまでやる気ですか。

荒俣先生キタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ!!
ということで、アッサリ購入。
我ながら釣られがいのある人間だと思いますとも、ええ。
前置きが長くなったが、これは『diaries(ダイアリーズ)』という雑誌の創刊号である。どんな雑誌なのかと問われると、回答するのがチト難しい。「毎日はもっと楽しい。」というキャッチコピーはあるが、雑誌の中身やネットで調べても「ダイアリーズはクリエイティブ・ライフ・ダイアリーです」「知的好奇心をくすぐるクリエイティブライフマガジン」「毎月1日から月末まで、日常の“冒険”をテーマに、1日1ページ立てで構成」「毎日がもっとエキサイティングで楽しくなるクリエイティブ・ダイアリー誕生」などなど、ダイアリーズが「どんな雑誌?」という問いに答えるクリティカルな定義はなかなか見つからない。ということで、断片的な情報と自身の感想を踏まえて、俺が勝手に定義づけしてみたい。

  • 日常の“冒険”をテーマに、毎日がもっと面白くて楽しくなるようなクリエイティブでエキサイティングなモノやコトを、ノンジャンルで提案している雑誌
  • 毎月1日から月末まで、日めくり形式で様々な情報を提案している雑誌

なーんか俺の定義もイマイチだが、まあ実際かなり混沌とした雑誌なわけですよ。御大・荒俣宏の無重力体験から海外ドラマ特集、海外SF映画100連発、スーツ、男の下着、アイルランド旅行、葉の表面から水分を吸収して成長するという特殊能力を備えた植物、座禅、足ツボマッサージ、手持ちの服の藍染め、竹を使った家具――ここまで来ると、もう俺のような凡人には切れ味の鈍い紹介しかできない。ただ、得てしてこうしたごった煮スープや非正統的な状況の中から、これまでの文脈を一気にすっ飛ばした「世界を変える何か」が生まれてきたりするのである。俺はクリエイティブな人間ではないが、少なくともクリエイションはロジックだけではない何かの力学が働いているということだけは断言できる。マイ・ライフを何か少しでも変えたい人間のためのカオスな雑誌――そうだ、知的アングラ雑誌と名づけよう。
ところで俺は「竹」という素材の可能性が数年前から気になっており、竹の家具なんかを定期的にチェックしたりしているのだが、いつか絶対にブレイクすると思う。加工は簡単とWikipediaには書かれているけれども、独特の筋や節があるため、木と比べると、まだまだ加工には限界がある。しかし生育や償却処理が簡単で、しっとり感とカラッとした表情を両立させた独特の湿度を湛えた素材感は日本の風情にも合っている(大半が中国原産だけどね)。俺は持ち家なんて全く興味ないのだけれど、もしも家を持つならば、コンクリや木の家じゃなくて竹の家を建てたいと本気で思っているのである。