ポール・オースター『空腹の技法』

空腹の技法 (新潮文庫)

空腹の技法 (新潮文庫)

エッセイ、序文、インタビューが収録されている。オースターのファンは言うまでもなく、俺のように今まであまりオースターを読んでこなかった人間にも、色々な楽しみ方のできる本だと思う。
ところで、オースターは子どもの頃にエジソンを尊敬していたそうだ。しかし実はオースターの父がエジソンの下で働いたことがあり、しかもエジソンは父をユダヤ人だというだけの理由で数週間でクビにした反ユダヤ主義者だった――という哀しいエピソードが胸に刺さった。オースターはエジソンを悪党と書いているが、まあ時代も時代だし、この事実だけをもってエジソンを悪党と呼ぶのは酷かもしれない。エジソンだって聖人ではないのだ。しかし、あたかも常識だと考えたり行動したりしていることの価値が、実は数十年後あるいは数百年後に転覆してしまう可能性がある、ということは教訓として受け取るべきだろう。