遠藤功+鬼頭孝幸+山邉圭介+朝来野晃茂『事業戦略のレシピ』

事業戦略のレシピ

事業戦略のレシピ

その名の通り、事業戦略を立てるための実務本なのだが、実に良い本だ。
例えば「SWOT分析」は最も有名な分析フレームワークのひとつだが、実は意外に使いこなすのは難しいと個人的には感じている。そう感じるのは俺だけではないようで、例えばファシリテーターとして知られる森時彦は、SWOT分析をSW分析(強み×弱み)とOT分析(機会×脅威)に分解し、二分割のツールとして分析することを推奨していた。さらに森時彦は、SWOTの内部分析(SW分析)と外部分析(OT分析)という性質から、SWOTではなくOTSW(OT分析→SW分析)とすることを推奨していたはずだ。相当参考になった記憶がある。
一方、本書は、OT分析とSW分析に分解し、OT分析→SW分析という順番を設定するところまでは森時彦のアイデアと一緒だが、さらに一歩進めて、OT分析を深く行うためのツールとSW分析を深く行うためのツールを5つずつ準備して、OT分析とSW分析を徹底的に掘り下げられるようにしてくれている。SWOT分析の解説として、本書は俺が今までに読んだ本やウェブの中で最も洗練されている。まさに脱帽!
ちなみに森時彦は、SW分析とOT分析を1回ずつ行うだけでなく、例えば対策立案の際にはST(強み×脅威)とWO(弱み×機会)で対策の有効性をチェックするなど、組み合わせを変えて二分割の分析を複数回繰り返すことを推奨している。「わかりやすさ」を保持しつつSWOTの機能を限界まで引き出す試みとして、こちらも本書に負けず劣らず勉強になる。