森岡浩之『夢の樹が接げたなら』

夢の樹が接げたなら (ハヤカワ文庫JA)

夢の樹が接げたなら (ハヤカワ文庫JA)

『SFが読みたい!』で紹介されていた本。
表題作「夢の樹が接げたなら」は、社内言語や個人言語など、独自の言語を使って仲間意識や優越感を持つ近未来。主人公は独自の言語を設計する言語デザイナーとして、これまでとは全く構造の異なる言語に遭遇する――というプロローグなのだが、極めて面白い! 俺も昔、既存の言語とは全く概念の異なる言葉があるとしたら一体どういうものだろう、と夢想したことがあるけれど、著者はその夢想を夢想に終わらせることなく、ロジックで武装し、さらにSFに仕立て上げている。
コピーライターや研究者など、知性や発想力を要求する仕事が「メディット」と呼ばれるコンピュータに代替された近未来を描いた「夜明けのテロリスト」も面白い。冒頭で予想していた物語とは全く違う方向に話が振れて、なかなか楽しませてもらった。