ジェリー・スピネッリ『スターガール』

スターガール

スターガール

『SFが読みたい!』で紹介されていた本。といってもランキングに入っていたわけではなく、SF評論家の巽孝之が「SF」として挙げていた本だったと思う。率直に言ってSFっぽくはないが、極めて面白い小説であることは確か。
主人公は、そのものズバリ「スターガール」という少女。本名はスーザンだが、自分で自分の名前をつけ、「スターガール」と名乗っている。自分で自分の名前をつける? そう、彼女は明らかに「変わっている」のである。
そんなスターガール、これまではホームスクーリングで学んでいたのだが、高校に通うことにする。これが物語のプロローグなのだが、予想通り、通い始めた途端、もう「みんな」の注目の的である。なんせウクレレをかき鳴らして誕生日を祝い、雨の中を踊り続け、ペットのネズミと一緒に高校に通う。しかしそのエキセントリックな振る舞いに、生徒の誰もが目を離せなくなる。語り部であるレオもスターガールにヤラレたひとりで、ほどなくレオはスターガールと恋人になる。
しかしエキセントリックであることの生きづらさは洋の東西を問わないようで、彼女が彼女であろうとすればするほど、「みんな」と浮いてしまう。そしてレオは人一倍シャイな人間なのである。彼女のエキセントリックな振る舞いで自分とスターガールが「みんな」から注目され、浮いてしまうのが耐えられない。レオはスターガールに「普通」であってほしいと思うようになる。そのエキセントリックさに惹かれたにも関わらず。
みんな、同じ、普通――アメリカにも「世間」があったんだな。
説明の難しい物語だが、決して難解ではない。これはオススメだ!