遠藤浩輝『遠藤浩輝短編集 1』

遠藤浩輝短編集(1) (アフタヌーンKC)

遠藤浩輝短編集(1) (アフタヌーンKC)

遠藤浩輝の初短編集。「カラスと少女とヤクザ」「きっとかわいい女の子だから」「神様なんて信じていない僕らのために」を収録。本書と初長編作品『EDEN 〜It's an Endless World!〜』の1巻、まあこの2冊が遠藤浩輝の最高傑作と言って良いかと。
何たる抒情!
そして何たる無常!
その後は、遠藤浩輝の紡ぎ出す物語はだんだんと複雑化・複線化し、絵柄もさらに高度に安定し、しかし俺が遠藤浩輝に対して感じていた衝撃は次第に目減りしていったと感じる。
本書を読みながら、この2冊は遠藤浩輝にとって今どのような位置づけを持っているのだろう、と改めて考えてしまった。この2冊の到達点が「越えられない高い壁」として厳然と立ちはだかり、10年以上も産みの苦しみを経験し続けているのか、既に諦めてしまっているのか、はたまた遠藤浩輝にとっての傑作の基準は俺とは全く違っており、この2冊は単なる青臭い習作に過ぎないのか――正直よくわからない。
しかしいずれにせよ、これから遠藤浩輝の描く漫画から、この2冊を超える衝撃を俺が受けることはないような気がする。限りなく危うい、絶妙のバランスの中で成立した傑作ではなかったかと、今から振り返ると、そう感じるのである。もちろん理由らしい理由なんて全然なくて、単なる俺の直感なのだけれど、そんな気がする。
EDEN(1) (アフタヌーンKC)