- 作者: 佐藤秀峰
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/02/23
- メディア: コミック
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第5巻の後半から続いてきたがん医療編も、8巻で終わりである。俺は7巻から8巻にかけては、もう何度読んでも涙をこらえることができない。屈指のエピソードである。
昨日のエントリーでも書いたように、第5巻で伏線的に挿入された「がんの告知」についてのエピソードが、ボディーブローのように効いてくる。しかも7巻から8巻にかけては、寛解(完治)の望めないステージ(ここでは、いわゆる末期がん)に突入した患者に対する抗がん剤の投与は、果たして意味があるのか、そしてあるとしたら、どのような意味があるのか……という、より根源的なテーマに踏み込んでいくのである。
抗がん剤推進派の庄司と抗がん剤否定派の宇佐美は、昔は仲の良い同僚だったが、ある「過去」をきっかけに全く違う道を歩んでいる。しかし最後は、斉藤の起こした波風と、ある末期がんの患者の存在がきっかけとなって、共通の「答え」を導き出すに至る。2人が出した結論は、個人的にはとても興味深いものだった。当然これだけが唯一の正解ではないけれど、少なくとも本書が書かれた当時において、従来の日本のがん医療に欠けていた視点のひとつであったことは事実なのだと思う。そして今でも、多かれ少なかれ欠けている視点である。
傑作エピソード満載の本作だが、がん医療編は特に深い。ここまで漫画でやるか、という衝撃は今なお減じることはない。これは人間の尊厳を必死に考えた漫画である。