佐藤秀峰『ブラックジャックによろしく』11巻

ブラックジャックによろしく (11) (モーニングKC)

ブラックジャックによろしく (11) (モーニングKC)

研修医(斉藤英二郎)が目にする日本の大学病院や医療現場の現状を描いた傑作漫画。斉藤は研修の配属先で毎回騒動を起こすが、それらの騒動は、ことごとく日本の医療が抱えている深い暗がりに足を踏み入れてしまう――というアウトライン。
9巻から13巻までは、精神科編。この巻では、小学校に男が侵入して無差別に子どもを襲ったという痛ましい事件が発生する。そして「実名は報道しないのに精神病院への入院歴は報道する」という「奇妙」なプライバシー配慮により、精神病は危ないという差別が、さらに深く日本に広がっていく場面が描かれる。しかし、このプライバシー配慮が「奇妙」だということ自体、この漫画を読まなければ多くの人は気づかないのではないだろうか? そしてそもそも「精神病は危ない」という認識を完全に拭い去ることは、多くの人間にとって難しいことだと思う。つまり俺も、この漫画で語られる「差別」とは無縁ではない、ということである――。
なお、この事件はおそらく池田小の事件などがベースになっているのだと思う。池田小の事件が現代日本に対して与えたインパクトは比類なきもので、決して他人事ではない。