水野敬也『夢をかなえるゾウ』

夢をかなえるゾウ

夢をかなえるゾウ

少し前に流行った超有名本。こういう流行った本には食指を伸ばさないのがデフォルトなのだが、先輩に推薦されたので、読んでみた。安易な成功ノウハウ本と思っていたけれど、自己啓発本だったんだな。関西弁のガネーシャ(ゾウの神様)が出てきて、主人公との掛け合い的な会話がゆるりと続くし、ずいぶん都合の良い解釈もあるが、ところどころハッとさせる言葉が出てくる。読みやすいし、売れたのも納得。
成功するのは大変で、やるべきことをやる気がないなら、ほどほどの人生を送る誓約書にサインしなさい――といった内容が冒頭で出てくるが、これには特にハッとさせられた。これは人生に対する覚悟の問題なのだが、実は「幸せな人生」と「成功した人生」は決してイコールではないという本質が潜んでいる。実は成功なんてしなくとも幸せな人生を送ることは可能だし、哲学者・中島義道に至っては、幸せすら目指すべきではないと言っている。

私は、目指すべきは成功や幸せではなく、豊かな人生だと思います。たくさんの失敗や苦しみは、濃密な人生の重要な要素になるんですよ。

もちろん、この発想は「ガンバリズム」と悪質な形で結託する可能性が高く、こうした覚悟を経営陣が従業員に強要するのは危険だと思うけれど、ビジネスパーソンが個人として肝に銘じるのは重要だと思う。

余談

本書には「意識ではなく具体的に目に見えるものを変化させる」ということがガネーシャの教えとして書かれていたが、これも納得。思えば、このブログも、「毎月10冊、1000冊の本を読む」というところから始めたのだが、それが今となっては約10年に渡って、合計1700冊以上の本の感想をアップしている。このブログがなければ、俺の読書量はもっと少なかったことだろう。半分以上は自分のためなので、拙い感想ではある。しかし以前に書いた感想を読むことで、本の内容をけっこう思い出せることがあるし、目に見える変化をコツコツ積み上げておいて良かったと思う。