- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/04/16
- メディア: ハードカバー
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ところで、BOOK 1とBOOK 2を読んでからしばらく経っていたので、その2冊を読み返してからBOOK 3を読むことにした。その結果、かなりどうでも良いことだが、タマルはスキンヘッドだったということに気づいた。初めて読んだときは外見の描写について特に気にしていなかったが、再読して、実はスキンヘッドだと知ったとき、なぜか小説のイメージが大幅に変わり、予想以上に新鮮な気持ちで再読できた。どうやら俺は勝手に『ケロロ軍曹』のポールのような外見を意識していたようだ。
ちゃんとじっくり読まないとダメだね。
あと個人的には、青豆ではなく天吾が1Q84の世界に移った正確なポイントが知りたいなあ。本当に『空気さなぎ』の執筆の段階で1Q84に移ったのだろうか。彼女に睾丸を握られたときに1Q84に移ったなんてことはないだろうか?(もちろん冗談です)
もう少しだけ真面目な感想も
BOOK 1からBOOK 3を通じて最も気になったのは、やはり「さきがけ」「あけぼの」「証人会」といった宗教団体が登場している点である。これらの宗教団体は、単なる物語上の設定ではなく、オウム真理教の起こした一連の事件を取材した『アンダーグラウンド』と『約束された場所で』を執筆する過程で得た何かが、長い時間を経て本書で結実したひとつの象徴と考えて良いだろう。村上春樹自身も、それらの取材経験や執筆経験が、長い時間をかけていつか小説のモチーフにまで深まっていく可能性を示唆していたはずである。それならば、いっそのこと1Q84ではなくて1Q95(または1QQ5、19Q5)にすれば良かったような気もする――とも思ったが、それはさすがに政治的な色合いがあまりにも強すぎるかもしれない。
なお、俺は阪神大震災と(地下鉄サリン事件を初めとした)オウム真理教の起こした一連の事件を、高校生という多感(だったと思う)な時期に同時代的に経験することになった。まあ経験と言っても直接的には「今朝の地震はけっこう大きかったよな」という程度の経験だが、その後もマスメディアの報道を通して間接的に2つの事件を“経験”するにつれ、俺は多くのことを考えさせられたし、やはり否応なく考え方が影響されていった。
いずれにせよ、ある出来事をきっかけに世界の理(ことわり)がいつの間にか変化してしまう、というSFじみた仮説は、実は意外にも俺の中で「しっくり」来ている。何と言っても、俺が生きている間に、阪神大震災、地下鉄サリン事件、酒鬼薔薇聖斗、同時多発テロ、リーマンショックが起こっているわけだから、もう「事実は小説より奇なり」なんてレベルではない。阪神大震災の揺れを感じて以来、実は世界が1Q95にズレてしまったのかもしれない。冗談じゃなくてね。