
- 作者: 石川雅之
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/12/22
- メディア: コミック
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4巻では、主人公(沢木直保)の特殊能力が消えてしまうというエピソードが描かれる。特殊能力が消えたことを知った先輩の長谷川遥は「見えなきゃアンタ……ただのチビじゃん……」「そのまま見えなくなっちゃったら アンタがここにいる理由って何?」という厳しい言葉を投げかける。それに対して、他の先輩らは「沢木は沢木だ それでよくねェ?」「俺らが持ってない力がもし消えたとして 俺らから見りゃマイナスじゃねェんだ ただのチビなんかじゃねェよ」と主人公をかばうのだが、一方で主人公は、この能力を自分から取ったらどうなるのか、深く考えざるを得なくなる。そして主人公は、長谷川遥の問いに対して、自分なりに(一応の)答えを出す――というアウトラインである。
これこそ、本作の主題を象徴的に示したエピソードではないだろうか。能力がなければ人に存在意義はないのか、能力が消えたら人は「マイナス」なのか――表面的な回答は、もちろん偽善的・偽悪的どちらの回答も簡単にできる。しかし突き詰めると、それは深く潜らざるを得ないテーマである。
思えば、主人公の特殊能力は、樹教授の研究室に出入りしたところで、あまり現実的に役立ってはいないし、積極的に使うようなエピソードにも乏しい。まあ菌の様子を描くことで、漫画をほのぼのとさせる効果はあるかもしれないけれど、漫画的には今のところ「大して役に立っていないギミック」と言えるかもしれない。しかし、この能力を使ったエピソードを安易に乱発させないところこそ、この漫画のテーマであり、この漫画の魅力だと、俺は4巻を読んで感じたのである。