古川日出男『サマーバケーションEP』

人の顔を覚えることができない「僕」が、ちょっと不思議な人々と、神田川を通って海を目指す物語。実験的な一人称の文体を採用している上、主人公の「僕」は(顔を認識できない代わりに)嗅覚や体温の認識や服装で人を見分けることに長けており、独特の小説世界が展開される。他の古川日出男の小説と比べ、決して目立つタイプの作品ではないが、なかなか面白い。