- 作者: 小川一水
- 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
- 発売日: 2008/10
- メディア: 単行本
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とにかく、時間軸のスケールが大きいのが良い。主人公はルドガーだが、本当の主役はレーズスフェントという街そのものである。もちろん主人公が生きている100年足らずの描写がメインだが、巨視的な描写が際立っている。ミクロの視点では、一人の人間(ないし地球外生命体)が必死に自分の人生を生きているが、マクロの視点では一人ひとりの人生の一局面など「さざ波」ですらない。ただ、そうしたエピソードがそのまま歴史の集合体の中に消えてしまうこともあれば、バタフライ効果として世界に大きな影響をおよぼすこともある。
小川一水は最近、こうした「巨視的」な視点での描写を意識することで、「時間」の途方もなさを掴もうとしているように見える。本作は言うまでもなく、『導きの星』でも同じようなミクロとマクロの視点を両立させた物語を書いていた。そして、それらの知見が現在も続いている『天冥の標』という壮大な本格SFに繋がっているのである。