羅川真里茂『しゃにむにGO』17〜32巻

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高校テニス部を舞台とした熱血スポーツ漫画。「苦しみながら成長する者」と「楽しみながら成長する者」の2人を主人公に据えており、極めて面白いテーマをはらんでいる。

17巻

ベースライナーの高津平太との試合。力量差はともかく、高津は酷い腰痛(おそらくヘルニアと思われる)に悩まされており、とても試合ができる状態ではない。しかしライバル佐世古の三年連続インターハイ優勝を阻み、プロになる前に「モンスター」を破ったという事実を作りたいと考え、故障を押して戦いにエントリーしているのである。
高津の怪我を知ってしまった伊出は、本気を出せずに苦しむ――という流れ。
高津というキャラクターは特に好きなので、なかなか楽しませてもらった。

18巻

伊出vs雷殿、滝田vs佐世古の試合。特に滝田については、描写が深く、読んでいて思わず興奮する。面白い!

19巻

伊出vs雷殿、滝田vs佐世古の試合が決着。残念だが、まあ力量差を考えると、こうなるよなあ。それに2年時でインターハイに勝ってしまったら、ラストの3年生での面白味に欠けるというのもある。

20巻

ヒロインのひなこが、従兄弟にして幼馴染の佐世古にプロポーズされる、という展開。従兄弟って結婚できるんだな〜とか思っていたら、主人公たちは3年時に進級し、また新しい後輩たちが登場。ひなこの弟に、心臓を手術したことがあるため激しい運動が禁じられている男子マネージャーが中心かな。色んなキャラクターを思いつくなあ。

21巻

この巻は試合シーンはなく、練習や人物関連のエピソードが中心。ま、こういうのも必要だよな。

22巻

一年後輩の黒田が大きく取り扱われている。中学時代、自分のプレーが元で大怪我を負わせた相手と対決することに。完全なトラウマになっているのだが、そのトラウマを乗り越えられるのか、というところである。
しっかし、右腕が駄目になったライバルの高科くん、サウスポーにチェンジしてテニスを続けるとは、凄いね。そこまでやれる人は普通いない。まあ漫画だからというのもあるかもしれないが、現実でも、こういう人はいるんだろうなあ。

23巻

22巻の後半から描写されていた、同じ高校の両主人公である伊出vs滝田の県大会決勝が終了。ジュニアとして長く活躍してきた滝田と、高校からテニスを始めた伊出が、ついに同じ「格」のライバルとして渡り合うようになる、ターニングポイントである。
でもまあ、たとえ漫画じゃなくても、10年以上やってきたプレーヤーとテニス2年のプレーヤーが負けるなんて、やっぱりプライドが許されないし、誰でも相当なプレッシャーがかかるよねえ。
で、この巻の途中からは一転、ラブ関係のエピソード。しかしテニスへの影響は深刻である。伊出は、ヒロインのひなこが佐世古からプロポーズされていることを知り、テニスに身が入らなくなってしまうのである。そして現状を深く憂慮した顧問(池やん先生)は、マネージャーであるひなこをクビにするという荒療治に出る。
そう来たかー!

24巻

伊出とひなこ、それぞれの根本的な問題が炙り出されていく中、同じく主人公である滝田の根本的な問題も炙り出される。それも、極めて深刻な――。
ほんと、少女漫画にしとくのはもったいない面白さだな!(少女漫画に失礼)

25巻

スランプから抜け出せない滝田をどうにかしたいという思いから、顧問の池やん先生は滝田の父親に会いに行く。もちろん父親に会っただけで全てが解決するわけではないのだが、ともかくも事態は動き始め、そして父親は過去を振り返る――。なかなか印象深いエピソードである。

26巻

テニスプレーヤーであるマリー・ビノシュの息子であるという事実、母親とずっと離れて暮らしていたという事実、そうした様々なトラウマが、ある出来事をきっかけに、吹き飛ぶ。そして滝田はテニスへの情熱を取り戻す(正確には、初めて獲得し得たと言って良いかもしれない)。良いエピソードだな〜。
ヒロインのひなこは、車椅子テニスと出会うことで、テニス部の皆に依存せずに自分らしさを発揮できるようになる。小さいながらも車椅子テニスの大会にも出たりね。一方で、ひなこは従兄弟の佐世古駿のプロポーズへの回答期限も迫ってきていた。父親は問う。
「ズバッと訊いちゃうけど ひなこは駿君の事をどう思っているんだ?」
そしてひなこは、父親とのやりとりの中で、心の奥底に眠っていた佐世古への「本当の気持ち」を自覚するようになる。いくつか伏線はあったけれど、そういうことだったんだなと納得。こういう感情を「愛」や「恋」と同列に捉えてしまう例は、現実世界でもよく起こりそうだな。

27巻

伊出vs佐世古。わずか2年ちょっとで超高校級のプレーヤーに成長した伊出と、伊出がテニスを始めるずっと前から同世代の世界的プレーヤーとして君臨してきた佐世古。追う者と追われる者、そして恋のライバル。なかなか面白い伏線が重なった試合である。

28巻

滝田の母親、父親、佐世古の父親、妹……それぞれの登場人物がインターハイ会場に集まり、大団円へと向けて物語が収束を始めている。しかしアレだ、ライバル佐世古君の妹もインターハイで優勝ですか。しかも可愛いし。そういう星の下に生まれた家族もいるんだろうなあ。

29巻

伊出vs雷殿、滝田vs佐世古という、インターハイのシングルス準決勝2試合。昨年のインターハイでも同じ組み合わせがあり、伊出&滝田の主人公コンビはどちらも敗れてしまったのだけれど、もちろん去年と同じにはさせないということで、アツい試合が展開されている。

30巻

伊出vs雷殿、滝田vs佐世古という、インターハイのシングルス準決勝2試合が決着。そして伊出・佐世古・ひなこによる三角ラブ関係も、ほぼ決着。そして(ある意味)誰よりも深い暗がりに落ち込んでいた佐世古も、テニスでもラブでもズタボロになった結果、やっと出口を掴むことになる。漫画的に素晴らしいオチだな〜。

31巻

ラストのクライマックスに向けて一直線。伊出と滝田という同じ高校同士によるインターハイ決勝を前に、伊出と滝田が腹の底からわかり合い、コートの中での健闘を誓い合う。そして滝田のラブと家族関係も落ち着くべきところに落ち着いた。さらに伊出とひなことのラブも落ち着くべきところに落ち着いた。おまけに、顧問の池やん先生のラブも落ち着くべきところに落ち着いた。
大団円過ぎだろう!
まあ正直こういう展開は「少女漫画だなあ」と思うが、悪くはない。俺も32歳だし、さすがに「ハッピーエンドは全部クソ食らえ」なんて思う時期は過ぎ去った。ご都合主義は唾棄すべきだが、落ち着くべきところに落ち着く「救い」のある話は、案外、悪くないとも思うのである。

32巻

「ハイスクール・テニス・ロマン」をキャッチコピーに10年以上も連載してきた本作だが、やっと完結。そもそもは妹が買ったのを読んでいたのだが、十分すぎるくらい楽しませてもらった。
それにしても羅川真里茂は引き出しが多いなあ。現代的ホームコメディの代表作と言える『赤ちゃんと僕』に、ゲイ/同性愛というデリケートなテーマを扱った『ニューヨーク・ニューヨーク』に、スポーツ漫画としての本作。次はどんな漫画を描くのか想像もつかないが、できれば赤僕や本作のように、コメディとシリアスのバランスの取れた作品を今後も描いてほしい。

追記

調べてみたところ、羅川真里茂は今『ましろのおと』という津軽三味線をモチーフとした青春漫画を描いているようだ。三味線ですか……これは想像できんかった。