榎本ナリコ『時間の歩き方』1〜2巻

時間の歩き方 I (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)  時間の歩き方(2) (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)
俺が若かりし頃、『センチメントの季節』で衝撃デビューを果たした女性漫画家によるタイムスリップSF漫画。
たとえ時間を行き来しても、重要な事実はそう簡単には変えられない――というのが本書の基本的なモチーフというか時間にまつわるロジック。まあ個人的には「時間旅行者の振る舞いのせいで歴史が変わる」とか、「時間旅行者の振る舞いのせいでパラレルワールドがひとつ増える」というよりは、本書のように「時間旅行者が自分の生きる時間とは違う時間軸にタイムワープして何かやらかすことも含め、事実は固定されている」という考え方の方がスッキリ来る。もちろんSFマニアに言わせると、こういう考え方だって矛盾がタップリあるんだろうけどね。
しかし『センチメントの季節』とは全く違うカルさとユルさ、そして思春期ならではの真っ直ぐなナイーブさが混ざり合って、物凄く面白い漫画である。傑作と言って良い。続きが楽しみ。

余談

榎本ナリコについては、少し前まで『センチメントの季節』というイメージしか持っていなかったが、1年くらい前に読んだ『世界制服』や『聖モエスの方舟』は結構な衝撃作だった。それに夏目漱石の『こころ』をモチーフにした作品も書いているようだし、野火ノビタ名義で評論も多く手がけているようだ。それにいわゆる青年誌やBL作品も。実に幅が広い。
世界制服 1―ユニ・フォーム (サンデーGXコミックス)  世界制服 2 (サンデーGXコミックス)  聖モエスの方舟 1 (サンデーGXコミックス)  聖モエスの方舟 2 (サンデーGXコミックス)
こころ (ビッグコミックススペシャル)  大人は判ってくれない―野火ノビタ批評集成