『ゴリラーマン』や『ストッパー毒島』で知られ、現在は『7人のシェイクスピア』を連載している著者による、音楽をモチーフとした少年漫画。主人公(コユキ)の所属するバンド「BECK」のメンバーは、音楽産業の大きな闇に巻き込まれながら、自分たちの表現を突き詰め、最高の音楽を創り、届けようとする。
名シーンが多発する作品だが、ライブシーン以外で外せないのは、4巻の、コユキの同志にしてBECKのドラマーになるサクとの出会いである。イジメられていたコユキを助けたサクは、自分と話すといじめられるから良くないと言ったコユキに対して、バンドマンの発言を借りて、自分の意志を伝える。
この世の中には2種類の人間がいる
賢い人間と素直な人間だ
賢い人間は誰かの作った規律と道徳がこの世の中を動かす全てだと思ってる
だがおれはそんなもん屁とも思っちゃいない
痺れるね……。
それにしても音楽漫画には傑作が多いと思う。俺が愛読している漫画だけで、浅野いにお『ソラニン』、一色まこと『ピアノの森』、さそうあきら『神童』『マエストロ』、二ノ宮知子『のだめカンタービレ』があるし、若杉公徳『デトロイト・メタル・シティ』も(音楽漫画というよりはギャグ漫画だが)まあ面白い。かきふらい『けいおん!』は、今では漫画というよりはアニメーションの方で有名だが、こちらも日常系ほのぼの漫画としては面白い。あと俺は未読だが、映画化もされた『NANA』なんかも有名だ。
漫画では「音」を直接的に表現できないからこそ、より表現が洗練され、かつ先鋭化されていくのかもしれない――と思ったが、実は「音」の視覚的描写にこだわっている作品というのは、やっぱりそれほど多くないな。その意味では、さそうあきらと一色まことはやっぱりスゴい。