村上春樹+大橋歩『おおきなかぶ、むずかしいアボカド 村上ラヂオ2』

おおきなかぶ、むずかしいアボカド 村上ラヂオ2

おおきなかぶ、むずかしいアボカド 村上ラヂオ2

けっこう久々に出された「何ということのないエッセイ」である。
村上春樹は、初期の頃こそ実に熱心にエッセイを書いていたのだが、ある時点からエッセイを書くのをパッタリと止めてしまった。自分は小説家なので、まず小説に全力投球して、そこからこぼれた残滓をエッセイにするのは良い。しかしまず「エッセイありき」でエピソードや感情を小出しにするのは、自身の小説にとって望ましくない――様々なところで書かれていることを俺なりに要約すると、こういうことになりそうだ。
もちろん俺は村上春樹のファンなのでそういう決定も尊重しているわけだが、村上春樹のエッセイの代替品は意外に見つからない。例えば本書のような「毒にも薬にもならないエッセイ」は、(簡単そうで)なかなか書けないものである。アルファブロガー(死語?)を見回しても、いつの間にか更新されなくなったり、いつの間にか「○○なう」のようなゴミしか投稿されなくなったり、いつの間にかイデオロギッシュになったりして、敬遠したブログがかなりある。
その点 村上春樹はプロなので、決して毒にも薬にもならないが、それでいて読んでいて気持ちの良い文章というのを、きっちりと読ませてくれる。こういうエッセイは、たまに読むと、心がほぐれて良いね。