太田垣康男による傑作SF漫画。
主人公の吾郎&ロストマンは、大学生にして地球を代表する山々を次々に制覇してきた一流クライマーであり、お互いを唯一無二のザイル・パートナーとして認め合ってきた仲である。その二人が、地球最高峰のエベレストの山頂で、山よりも遥かに高い「宇宙」を目指すところから、この壮大な物語は幕を開ける。そして吾郎は、宇宙では「インテリ」ではなく月面開発のための「ブルーワーカー」こそが必要になると見抜いて、BS(ビルディングスペシャリスト)としてのスキルを着々と積み上げていく。一方ロストマンは米軍に。空軍のエースパイロットからNASAに入り、「アメリカ宇宙軍」の一員として組織をのし上がっていく。二人は別々のルートを辿りながらも月へと近づいていくのだが、月は軍事面でも資源面でも超重要な戦略拠点であり、二人は否応なく月社会の覇権を賭けた争いに巻き込まれていく−−第一部はこんな感じのアウトラインである。
そして17巻の後半から始まる第二部では、吾郎の息子であり、初めての「ムーンチャイルド」である歩が主人公。より政治性の増した世界で、差別やテロリストといった大きな力に翻弄されながら、自分でモノを考えていこうとする−−という感じか。
なかなかハッタリが効いており、実に楽しめるストーリーである。特に第一部は本当に面白い。