- 作者: 石川啄木
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2008/10/07
- メディア: 文庫
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石川啄木の代表作。石川啄木は(俺のような素人でもそう感じるほどの)美しい歌をいくつも残したが、その美しさとは裏腹に(かどうかは知らないが、とにかく)借金まみれのとんでもない屑人間だったそうだ。とてつもなく女遊びがひどい上、方々から無心してやっとのことでかき集めた金すらも、手に入れた途端に気が大きくなって、返すべき・払うべきところに金をよこさず、飲み食い博打に本を買う……という体たらく。
働けど働けど……の有名な歌も、こういう事実を知っていると否応なく見方が変わってくる訳だが、でもこんなこと学校で習ったかなあ?
まあ何はともあれ、教科書や参考書に載っている有名な歌以外で個人的に気になった歌を紹介。
手套(てぶくろ)を脱ぐ手ふと休(や)む
何やらむ
こころかすめし思ひ出のあり
短歌や俳句といった文字数の少ない定型詩は、その制限故に、こうした何気ない描写の「その先」や「細部」を読者に想像させてくれるという良さがあるなあと改めて感じる。
かなしみのつよくいたらぬ
さみしさよ
わが児のからだ冷えてゆけども
実子がなくなったのかどうかは定かではないが、本書の最後の8つの短歌は、子供が死にゆく悲しさを歌ったものである。他の短歌から類推するに、勤め先から帰ってきたら子供が急に……というシチュエーションのようだ。あまりにも突然で、心が上手く働かず、かえって冷静に遠くから自分が見つめている。あまりの出来事にリアリティが欠如したままメタ的に自分を見つめている感覚……よくわかる。人生にそう何度もあるわけではないけれども。
友われに飯を与へき
その友に背きし我の
性のかなしさ
石川啄木の駄目さ加減がよく出ている歌。他にも駄目さ加減が出ている歌はたくさんあったのだが、一番気に入ったのがこれ。でも何だろね、太宰治なんかもそうなのだが、この頃の文士だの文豪だのと呼ばれる人には、駄目な自分に陶酔しているところがあるね。これは絶対、ここまで駄目な自分が実は心の奥底では好き、でもそのことを自覚して逆説的に肯定し許してしまっている自分が嫌い、でも……という自己陶酔の無限ループにハマってるよな。まあ今でいう厨二病?