小川一水『風の邦、星の渚 レーズスフェント興亡記(上)』

単行本で読了済なのだが、持ち運びやすい文庫本になったので再購入&再読。上下巻に分かれたが、薄くて良いね。内容紹介としては、単行本の感想で書いた文章の繰り返しになるが、父親と対立して辺境に追いやられた主人公(騎士ルドガー)が、泉に棲む精霊(?)のレーズと出会い、レーズの力も(時々)借りながらレーズスフェントという街を作り、成長させていく物語。
ポイントは、一人称小説や、一時期のイベントを描いた作品なのではなく、レーズスフェントという街そのものを主役に設定したことである。そして街の勃興や変化という雄大な時間軸を設定したことも大きい。つまり「人」や「時間」ではなく「場所」を固定し、そこで生きる人の物語や、街並みの時代による変遷を素描する。あまり見かけないアプローチだと思うが、読んでいて面白い。