
- 作者: 漆原友紀
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/02/28
- メディア: コミック
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漆原友紀のデビュー作にして代表作。
「蟲」と呼ばれるモノが存在する「江戸期と明治期の間にある架空の時代」の日本を舞台とした叙情的な作品。蟲は漆原友紀の独自の概念であり、虫とは異なる。ごく簡単にまとめるなら、生物と無生物の中間的な存在であり、精霊や妖怪に近いモノと考えて良いと思う。ただし『ゲゲゲの鬼太郎』のように人格を持って人語を話す蟲はそれほど多くない。また自然現象に近い蟲もあり、既存の概念や言葉で過不足なく表現し尽くすことはできない。まあだからこそ漫画という表現形式で面白さが爆発して、人気作品にもなったのであろう。
とりあえず「蟲」の定義付けはこの程度で諦めるが、少なくとも人間と蟲があまり近づき過ぎると良くない影響を人間に及ぼすことがあり、そうした蟲を遠ざけたり、退治したり、蟲によって受けた体調不良を治したりするのが、表題にもなっている「蟲師」の役割である。
最初に「叙情的」と表現したが、まさにそうとしか言いようのない作品イメージである。ほとんどの人間が和装であることもその叙情性(というか郷愁)に一役買っているかもしれない。しかし個人的には「腐海」を舞台にした『風の谷のナウシカ』や「照葉樹林」にスポットライトを当てた『もののけ姫』と同じく、特に日本の古い水墨画などで感じられる日本独特の湿り気を描写できていることが、本作の叙情性の核ではないかと思っている。
余談
アニメ化や実写映画化もされている。アニメ化は(一部しか観ていないが)原作にかなり忠実、いやむしろ忠実すぎるというイメージを持った。個人的には、漫画をアニメ化する場合、オリジナルキャラクターやオリジナルストーリーを追加してほしいと思うタイプである。全く同じ内容・設定であれば、わざわざアニメを作る必要も観る必要もないと俺は思う。もちろん『ハチミツとクローバー』のような例外も多々あるが、アニメ化されるほど優れた作品は多くの場合、静止画であっても絵は「生きて」おり、動きが感じられるのである。逆に動きを感じられない漫画の場合、その魅力はそこにはなく、単にアニメ化しただけでは失敗することが多い。