玉井雪雄『かもめ☆チャンス』1〜11巻

かもめ☆チャンス 1 (ビッグコミックス)  かもめチャンス 2 (ビッグコミックス)  かもめチャンス 3 (ビッグコミックス)  かもめチャンス 4 (ビッグコミックス)
かもめチャンス 5 (ビッグコミックス)  かもめ☆チャンス 6 (ビッグコミックス)  かもめ☆チャンス 7 (ビッグコミックス)  かもめ☆チャンス 8 (ビッグコミックス)
かもめ☆チャンス 9 (ビッグコミックス)  かもめ☆チャンス 10 (ビッグコミックス)  かもめ☆チャンス 11 (ビッグコミックス)
冴えない信金マンが自転車に目覚めていく物語。すっごく面白い!

1巻

トラブルに巻き込まれた主人公が、たまたま自転車屋に展示してあった自転車を借りたところ、それが140万円もする限定モデルで、しかも事故に巻き込まれて壊してしまう――という踏んだり蹴ったりの漫画的展開。
で、その140万円を払うか、「替え玉」として乗鞍のヒルクライムレースに出るかを選べと言われ、当然(という訳でもなかったのだが、すったもんだの末)140万円を拒否してヒルクライムに出ることにした主人公が、美少女高校生に自転車の特訓を受ける――という、更なる漫画的展開が待ち受ける。

2巻

その後、色々あって140万円の限定モデルの自転車を弁償する代わりに、ヒルクライムレースで1時間30分以内にゴールしなければならなくなった主人公。とはいえ何の練習もせずに1時間30分を切ることは不可能(というか生半可な練習でも無理)なので、無謀ながらも特訓に励むことになる。

3巻

実力的にはまだまだだが、何とか1時間30分を切れる状態で、スタートすることに。ただし「替え玉」として出場しようとしたことが、真剣に自転車に取り組んでいた人々の怒りを買い、妨害を受けることになる――という展開。面白いなあ。

4巻

主人公は、実力・経験共に「まだまだ」だが、実は主人公には、自転車競技者として極めて有効に作用する幾つかの「才能」が眠っていることが徐々に明らかになる――という展開。そんな簡単に眠っている訳がないだろうと考えてはダメだ。漫画的展開なら十分にあり得るし、面白ければ良いのである。

5巻

さらに才能の片鱗を壮絶な形で見せつけていく。どこまで燃え上がるんだこの対決!

6巻

最後の最後まで燃えに燃えて、そして燃え尽きてゴール。ヒルクライムレース編は終わったようだが、次はピスト乗りとの街乗り対決に移る。実は乗鞍ヒルクライム編で、主人公には「自転車の才能はあるが、ヒルクライムには向いていない」ということが明らかになっていたので、平地の勝負は順当な展開かもしれない。

7巻

変則ルールで、ロードvsピストの対決。実際どこまでリアルなルールなのかはわからないけれど、この人は「あとがき」でもわかるように、アシスタントも含めて全員が自転車乗りという健康的な漫画家であり、自転車のことも相当調べていると思う。

8巻

ロードvsピストという変則対決が終了。特に「ブレーキ」にまつわるエピソードはなかなか深い。で、次なる自転車対決……と行きたいところだが、リストラの危機に自転車もなく、一人娘も母方の祖父母に奪われそうで、かなり踏んだり蹴ったりの展開。しかし面白いなこの漫画は。

9巻

「生活」に押し潰されそうな8巻とは一転、家族も生活も収入も全て捨ててプロ入りに賭ける桜島との対決がロード対決がメイン。桜島との対決を通じて、彼の自転車乗りとしてのアイデンティティ・スタンスが固まっていく上、主人公・更科の下りの強さの秘密も解明される。非常に重要な巻である。

10巻

MAX比嘉のキャラクターが最高。しかし着実にチームとしての体制が整いつつあるな。「全員集合」はもう少しという感じがするけれど、例えば『スラムダンク』では全員集合後、試合の描写レベルが極めて向上した。本作も、これからどこまでレース描写のレベルを上げられるかで、今でも十分に面白いこの作品が「傑作」になるかどうかの分かれ道になりそう。しかし初っ端の乗鞍ヒルクライム編で既に凄すぎるくらいのレース描写をしたわけで、この後どこまで描写レベルを上げられるかなあ。

11巻

この巻はシクロクロスのレースが中心。シクロクロスもけっこう面白そうだなあ。とりあえず梶というキャラクターがまたサイコーです。