有川浩『図書館戦争』

凄く評判が良いので読んでみたのだが、凡庸なライトノベルという印象しか持てず、質の高いエンタメ小説を読めるという期待は盛大に裏切られた。
本書の根幹を成す「検閲と知的資産」というモチーフと、「それらを武力で守る」というアイデアは面白いと思う。まあこの批評が最も有効だったのは1990年代で、今となってはちと古いと思うものの、電子書籍著作権といった問題と照らし合わせながら読むと、2012年現在でも十分に面白いテーマである。
しかしキャラクター造形と台詞回しが完全なライトノベルで、読んでいてとにかく興醒めする。知的資産を武力で守る主体……それは「軍隊」と言うとさすがに大袈裟かもしれないが、まあ銃を持つくらいだから日本の警備会社よりははるかに軍隊に近い組織と言って良い。少なくとも軍事力を有した組織と言って良いだろう。それなのに主人公は(軍事組織で上官に無意味に反抗するだけでも言語道断なのに)さしたる理由もなく、上官をチビだと侮蔑したり、さして不当とも思えない上官の指摘に暴力(ドロップキック)をかましたりと、もうあまりにも現実離れしている。しかもそんな主人公が「エリート」部隊に配属される……全然ピンと来ない。