筒井康隆『ヨッパ谷への降下』

ヨッパ谷への降下―自選ファンタジー傑作集 (新潮文庫)

ヨッパ谷への降下―自選ファンタジー傑作集 (新潮文庫)

「自選ファンタジー傑作集」と題した短編集。わかりやすいオチのある小説は少ないが、難解という訳ではない。まさにファンタジーというべき異世界に放り込まれて、その違和感を楽しむ小説だろう。
俺が最も面白いと思ったのは「薬菜飯店」という短編。これは完全にジョジョの第4部のトニオのエピソードと同じである。いや、時期的には「薬菜飯店」の方が先に書かれたようだが、要は胡散臭い料理店で胡散臭い料理を食ったら悪いところが物凄い勢いで治っていく、というプロット。ジョジョを読んだときは「これは漫画でしか表現できない」と思っていたのだが……でもそんなことはなかった。筒井康隆の描写力は圧倒的だね。