筒井康隆『愛のひだりがわ』

愛のひだりがわ (新潮文庫)

愛のひだりがわ (新潮文庫)

筒井康隆による近未来の日本を舞台としたジュブナイル小説。
小学六年生の月岡愛は、父が行方不明になり、母も亡くし、街でも家の中でも居場所を失っていた。そこで愛は仲良しの大型犬デンを連れて行方不明の父を捜す旅に出かける。しかしもはや警察もまともに機能しない近未来の日本は治安も悪く、愛は片っ端から事件や不幸に見舞われ、悪い奴らにも数多く遭遇する。しかし彼女は、幾人かの貴重な仲間やデンに助けられて旅を続けていく。そして彼女は彼女なりの努力と才覚でもって自分の居場所を見つけ、未来を勝ち取るのである(ハッピーエンドかどうかは置いといて)。
なおジュブナイルだからか、あまり登場人物の行動や心情を複雑に描写している感じはしない。むしろ小学生である(物語の途中で中学生になる)主人公の幼いながらも真摯な目線で世界が切り取られ、理解されている。ジュブナイルと侮るなかれ、かなり鋭い描写だと俺は思った。