- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/03/15
- メディア: 文庫
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本書はトリックとしての完成度は高いようで、ミステリファンの評価も高いらしい。マンネリ化を防ぐためか、西之園がたまたま出会った中年男が狂言回し役を務めているが、凡庸で愚鈍で陳腐なこの男のダダ漏れな心理や軽はずみな行動がとにかく不快で、俺は読んでいてちっとも楽しめなかった。ここまで読み手の気持ちを揺さぶるとは森博嗣の筆力は相当なものだ……などと思っていたのだが、本書のトリックが明らかになったとき、その評価が一変する。
傑作だ!
そのトリックが読者に(というか俺に)提示されて以来、もやもやとした不快感がスーッと消え去り、色々なことが瞬時に諒解された。そして諸々の事件の全容のイメージがおぼろげながらも俺の頭に浮かんできたのである。
読み進めている際は駄作だと思っていたが、読み終えた今、確かに世のミステリファンが言うように本書はS&Mシリーズの白眉と言って良いかもしれないと思った。少なくとも「衝撃度」という点ではね。