アトゥール・ガワンデ『なぜアナタはチェックリストを使わないのか?』

アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】

アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】

いわゆるライフハック系のブログで紹介されていた本。
俺は氾濫するライフハックな情報のほとんどを「小手先のテクニック」か「瑣末なアイデア」か「文房具マニアやITマニアのアピール」としか判断できないことが多く、興味を持てないので、そのブログははてなブックマーク人気エントリー経由で「たまたま」アクセスしただけである。しかし本書のタイトルでもある「なぜアナタはチェックリストを使わないのか?」という問いは、何度も読み返してみると凄く本質的に深いなと思い、購入してみた次第。
いざ読んでみると、チェックリストが使われずに望ましくない結果に陥った事例や、チェックリストを使うようになって望ましい結果を得た事例が、実にふんだんに載っている。というかほとんどそれしか載っていない。特にチェックリストを「作るノウハウ」と「導入・定着させるノウハウ」については致命的に不足している。この種の本を手に取る人の大半は「チェックリストを必要だと思っているのに、巧く作れない、または導入・定着させられない人」であろう。チェックリストの必要性を感じていない人が手に取るとは思えない本なのに、チェックリストは必要で有益なものだと再認識させる事例ばかりが延々と紹介されている。
俺には明らかに「肩すかし」の本だが、世間的にはそうでもないようだ。例えばAmazonではカスタマーレビューが16件で、★平均4.4……はっきり言って激甘である。Amazonのレビュアーの中には本書が過小評価されていると嘆いている方がいたけれども、俺は逆に、本書が明らかに過大評価されていると感じた。
なお本書の最後(あとがきや謝辞・参考文献よりも更に後ろ)に「チェックリスト作成のためのチェックリスト」というものが(1ページなんだけど)おまけ程度に記載されている。23項目で構成されているが、これはまあノウハウとして良いと思う。5つほど挙げてみる。

  • はっきりとした目的が簡潔に定義されている
  • 声に出して確認できるものである
  • チェックを行うことによって改善できるものである
  • 仕事の区切りがよいところに一時停止点(チェックリストを使用するタイミング)が設定されている
  • 仕事の流れを妨げない etc...

ただしこれが巻末ではなくて巻頭に載っていたら、もっと良かった。例えば、これらのチェック項目を満たしたチェックリストを使った場合と、23項目を満たしていない低クオリティーなチェックリストを使った場合の事例(あるいは想定される結果)が書き分けられている……という内容なら、事例中心の構成でも、もっと面白くなっただろう。ややチープなコンセプトになるが、23項目の条件を満たしたビジネスシーンや日常生活におけるチェックリストのテンプレートがあっても良いかもしれない。もちろん最も良いのは、23項目を満たしたチェックリストをどうやって作り、そして導入・定着させれば良いのか、その方法論が具体的に記載されていることである。